「後継機」とは発表されていない

ローランドは2026年9月に FP-40 を発表しました。国内の発売日は2026年9月19日です。2021年から販売されている FP-30X の後継機だと考える方は多いでしょう。ただ、ローランドはそう発表していません。FP-30X は引き続き製品ページに掲載されており、FP-40 を後継機とする公式の説明もありません。

そのため、この比較は「旧型か新型か」ではありません。どちらも現行のローランドのポータブル型で、鍵盤は同じです。違いは限られた数か所にあり、FP-40 が有利な点もあれば、FP-30X が有利な点もあります。

方法について先に書いておきます。これは公開スペックにもとづく比較で、2台を弾き比べた経験はありません。数値はすべてローランドの公表仕様によります。

変わっていない部分:鍵盤

2台とも鍵盤はローランドの PHA-4 Standard です。公表仕様では、どちらもエスケープメントと Ivory Feel(象牙調の鍵盤表面)を備えています。仕様の上では同じ鍵盤で、同時に出せる音の数もどちらも256音です。ローランドの仕様ページはどちらの機種も同じ表記で、「PHA-4 Standard Keyboard: with Escapement and Ivory Feel」と記載されています。

これは残りの項目の読み方に関わります。この2台で迷っているなら、弾き心地は決め手になりません。どちらを選んでも同じ鍵盤だからです。判断材料になるのは、音、ヘッドホン、接続機能、サイズの4点です。

音:音源とスピーカー構成が違う

FP-30X の音源は SuperNATURAL Piano です。FP-40 は、ローランドが Piano Reality Sound Engine と呼ぶ新しい音源を使っています。

スピーカーの数値は近い値です。FP-30X は12cmのスピーカー2基を11W×2で鳴らします。FP-40 は8×12cmのスピーカー2基をスピーカーボックスに収め、12W×2で鳴らします。1チャンネルあたり1Wの差で、居間で弾いて音量がはっきり違うほどではありません。スピーカーボックスで聞こえ方がどう変わるかは、店頭で自分の耳で確かめる項目です。

音色数は、意外にも FP-30X の方が多くなっています。FP-30X は本体パネルから56音色、Roland Piano App を使うと合計321音色です。FP-40 は本体パネルから40音色、合計305音色で、残り265音色はアプリからしか選べません。スマートフォンを使わず本体で音色を選びたい方には、FP-30X の方が選択肢が多くなります。

ローランドは、どちらの音色リストについても内訳(ピアノが何種類、エレクトリックピアノが何種類、といった区分)を公表していません。ですから、中身を一覧で突き合わせる比較は公表仕様からは作れません。数字から確実に言えるのは2点です。音色の総数は FP-40 の方が少ないこと、そしてアプリを使わずに選べる音色も FP-40 の方が少ないことです。さらに、リストの先頭に並ぶピアノ音そのものも同じではありません。音源が違うためで、FP-30X は SuperNATURAL Piano、FP-40 は Piano Reality です。ここは表では判断できず、店頭で実際に聴いて確かめる部分になります。

ヘッドホン:家庭で最も差が出やすい点

最初に確認したいのはこの点です。

FP-30X のヘッドホン端子は2系統で、ステレオミニ端子と標準端子(6.3mm)が1つずつあります。FP-40 は1系統だけで、ステレオミニ端子です。ローランドの表記は「Phones/Headset」で、マイク付きのヘッドセットも使えます。

1人でイヤホンや小型ヘッドホンを使って練習するなら、FP-40 の1系統で困ることはありません。困るのは次の2つの場面です。

どちらも致命的な差ではありません。ただ、箱を開けてから気づくことが多い項目です。

接続機能:FP-40 がはっきり新しい部分

2台とも Bluetooth オーディオと Bluetooth MIDI に対応しています。スマートフォンの音をピアノのスピーカーで鳴らすことも、練習アプリと無線でつなぐこともできます。違うのはバージョンです。FP-30X はオーディオが Bluetooth 3.0、MIDI が4.0です。FP-40 は Bluetooth 5.4で、従来のオーディオ(A2DP)、LE Audio、MIDI に対応します。

FP-40 には Wi-Fi も内蔵されており、これは FP-30X にはありません。ローランドの説明では、自宅のネットワークにつないでシステムを更新するための機能です。対応は2.4GHz帯のみです。

練習用の曲は、本体からアプリへ比重が移っています。FP-30X の内蔵曲は30曲です。FP-40 は4曲で、代わりに Piano Sphere というアプリを案内しています。ローランドによると、このアプリでは最初から100曲を使えます。譜面立てにタブレットを置いて練習する方には、妥当な置き換えです。画面を使わずに練習したい方には、本体に曲が多い FP-30X の方が扱いやすいでしょう。

サイズ、スタンド、ペダル

ローランドはどちらも譜面立てを外した状態で寸法を公表しています。

FP-40 は3cm近く低く、棚にしまったり、使わないときに片付けたりする場合に有利です。一方で奥行は5cm近く深く、奥行の浅い机では気になります。FP-40 の重さは譜面立て込みで14.0kgです。公表値では FP-30X より少し軽いものの、差は1kg未満で、持ち運びの手間は変わりません。

どちらもスタンドは付属せず、専用スタンドはそれぞれ別です。FP-30X は KSC-70、FP-40 は KSF-40 です。ペダルスイッチ DP-2 はどちらにも付属し、3本ペダル KPD-70 はどちらもオプションです。電池駆動にはどちらも対応していません。

どちらを選ぶか

ローランド FP-30X は、ヘッドホンで2人が聴く場面がある方、6.3mmプラグの大きめのヘッドホンを持っている方に向きます。アプリなしで本体から多くの音色や曲を使いたい方、机の奥行に余裕がない方にも合います。

ローランド FP-40 は、1人でヘッドホンやイヤホンを使って練習する方に向きます。スマートフォンやタブレットで練習を進めている方にも合います。新しい Bluetooth や LE Audio、Wi-Fi による更新を重視する方、薄さを活かして片付けたい方も候補に入れやすいでしょう。

鍵盤は同じなので、店頭で確かめるべきなのは違いのある部分です。スピーカーから出る音と、ヘッドホン端子1系統が自分の家庭で困らないかの2点になります。ヤマハも候補に入っている方は、ローランド FP-40 とヤマハ P-225 の比較ローランド FP-30X とヤマハ P-225 の比較も参考になります。