2年間、ピアノを買うのを先延ばしにしてきた。欲しくないわけではない。でも、楽器を置くスペースがどこにもない。そんなときに目に留まったのがPX-S1100です。奥行きわずか102mm。分厚い本よりも薄い。乾電池でも動く。キッチンテーブルの上に置いて、弾き終わったら壁に立てかけておける。突然、「ピアノを持つこと」が現実的に思えてきます。

カシオが魅力的かどうかという話ではありません。明らかに魅力的です。問題は、妥協しているのかどうかということです。正直に言えば、答えは「あなたの生活と練習スタイルによる」です。

薄型ボディが実際に意味すること

PX-S1100はデザインで誤魔化した妥協の産物ではありません。本物のSmart Scaled Hammer Actionを搭載し、各鍵盤に重さが付いています(低音は重く、高音は軽い)。象牙と黒檀を模した表面仕上げも採用されています。PX-S1100もFP-30Xも、鍵盤の表面に質感があり、どちらも質に妥協はありません。カシオが解決した設計上の課題は、そのメカニズムを奥行き102mmのボディに収めたことです。FP-30Xは284mmあります。この18cmの差が、「本棚に立てかけられる」と「専用スタンドが必要」の違いになります。

単3乾電池6本での使用は、AC電源と同じ性能を発揮します。音質、鍵盤の応答、同時に出せる音の数(同時に出せる音の数)に差はありません。乾電池はコンセントが見つからないときの非常用ではありません。キッチンテーブルで練習して、昼食後に書斎へ移動して、来客前にクローゼットにしまえる——それを可能にするための機能です。

重さ11.2kgで、片手で持ち運べます。FP-30Xは14.3kgで両手が必要で、奥行きがあるため専用スタンドにしか置けません。

答えを決める一つの質問:ヘッドホンを使うか

この比較で最も重要な点ですが、多くの記事ではあまり触れられていません。

FP-30Xには3.5mmと6.3mm、2つのヘッドホン端子があり、ローランドの「Headphones 3D Ambience」処理も搭載しています。この空間アルゴリズムにより、ピアノの音が頭の中で鳴っているのではなく、目の前で鳴っているように聴こえます。深夜にヘッドホンで練習していると、なぜか疲れやすいと感じたことがあれば、たいていの場合この空間処理の有無が原因です。端子が2つあるので、先生と生徒が同時に接続して一緒に聴くこともできます。

PX-S1100には3.5mmの端子が1つだけで、空間処理はありません。端子が1つなので2人で同時に聴けません。空間処理がないため、長時間の練習中は音が「頭の中に閉じ込められた」ような感覚になります。

マンションの薄い壁、家族の就寝中、オンラインレッスンなど、ヘッドホンを使う機会が多いなら、これは毎日感じる差です。ヘッドホン中心の方にはFP-30Xが明確な答えです。主にスピーカーで弾いており、ヘッドホンは時々という方なら、カシオの端子1つで十分です。

Bluetoothについて知っておくべきこと

FP-30XはBluetooth AudioとBluetooth MIDIを標準搭載しています。アプリを開いて数秒で無線接続できます。

PX-S1100はどちらも非搭載です。Bluetooth MIDIを使うにはWU-BT10アダプター(別売り・2,000〜3,000円程度)が必要です。Bluetooth Audioは一切なく、スマートフォンの音楽をピアノのスピーカーから無線で流すことができません。これは購入後に発覚することが多い点です。無線接続が重要な方は、アダプター代を含めた実際の費用を考慮してください。

ローランドが残す選択肢、カシオが閉じる選択肢

FP-30Xにはライン出力(外部スピーカー、録音機器、PAシステムへの接続用ステレオ端子)があります。PX-S1100にはライン出力がありません。初心者の今は抽象的に感じるかもしれません。でも将来、演奏を録音したくなったとき、より良いスピーカーに接続したくなったとき、広い部屋で人に聴かせたくなったとき、FP-30Xはその選択肢を残してくれています。カシオにはありません。

3年後の視点で見ても、FP-30Xのほうが長く使えます。SuperNATURALは、音の余韻、強さの変化、ペダルの響きを、カシオのMorphing AiRエンジンよりも繊細に表現します。日々の練習で耳が育つにつれ、この差が分かるようになります。

2種類の買い手への明確な結論

カシオ PX-S1100を選ぶ方: ピアノを置く固定スペースがない、主にスピーカーで弾く(ヘッドホン中心ではない)、ライン出力は当面不要、そしてこのサイズ感こそがついに購入を決断した理由である方。こういった方には——そして実は多くの方がこれに当てはまります——PX-S1100は妥協ではありません。正しい答えです。実際に弾けるピアノを持つことのほうが、スペックが優れていても2回引っ越しして結局弾かなくなるピアノを持つより価値があります。

ローランド FP-30Xを選ぶ方: ヘッドホンが練習の中心である、将来的に録音や演奏のためにライン出力を使いたい、別売りアダプターなしで無線接続が必要、または数年かけてスキルが伸びるにつれてついてきてくれる楽器を優先する方。

カシオは、あきらめかけていた人々にとってピアノを持つことを可能にしました。それは小さなことではありません。適切な人が適切な家で選ぶなら、PX-S1100のほうが良いピアノです——まさにそこに「収まる」からこそ。