この比較がよく話題になる理由

カワイ ES120 とローランド FP-40 は、どちらも自宅練習を主な用途とする88鍵のポータブル型で、価格帯も近い2台です。どちらが安いかは、購入する国や販売店によって変わります。この2社の比較では、カワイ ES120 とローランド FP-30Xが以前から定番でした。ローランドは2026年9月に FP-40 を発表し、FP-30X も引き続き掲載しています。FP-40 を FP-30X の後継機とは発表していませんが、ES120 と並べて検討されるローランドのポータブル型として、FP-40 は有力な候補になっています。

要点を先にまとめます。FP-40 は、鍵盤の構造、同時に出せる音の数、音色数、無線機能で上回ります。ES120 は、本体が軽く奥行が浅いこと、ヘッドホン端子が2系統あること、100種類のリズムを内蔵していることで上回ります。

方法について先に書いておきます。これは公開スペックにもとづく比較で、2台を弾き比べた経験はありません。数値はカワイとローランドの公表仕様によります。

鍵盤:エスケープメント付きか、カワイのコンパクトなアクションか

ES120 の鍵盤はカワイの Responsive Hammer Compact です。低音ほど重く高音ほど軽いハンマーの重みづけと、マットな鍵盤表面を備えています。FP-40 はローランドの PHA-4 Standard で、公表仕様ではエスケープメント(押し込む途中の小さな手応え)と Ivory Feel(象牙調の鍵盤表面)を備えています。ES120 の仕様にエスケープメントの記載はありません。

当サイトのタッチ等級では、PHA-4 Standard が Responsive Hammer Compact より2段上です。この数値は公表されている構造から機械的に決めたもので、弾いた印象ではありません。ローランドにはエスケープメントと質感のある鍵盤表面が加わること、Responsive Hammer Compact がカワイの薄型ポータブル型に使われるコンパクトなアクションであることを反映しています。

ただし、等級で好みが決まるわけではありません。カワイのタッチそのものを好む方もいますし、将来カワイのアコースティックピアノや据置型に移る予定があり、同じメーカーのタッチを続けたい方もいるでしょう。それは ES120 を選ぶ十分な理由です。可能なら両方を試すと良いでしょう。

ヘッドホン:ここは ES120 が有利

ES120 のヘッドホン端子は2系統で、標準端子(6.3mm)とステレオミニ端子(3.5mm)が1つずつあります。ヘッドホン向けの機能として Spatial Headphone Sound も備えています。FP-40 は1系統のステレオミニ端子で、ローランドの表記は「Phones/Headset」です。マイク付きのヘッドセットも使えます。ヘッドホン向けの機能は Piano Reality Headphones Ambience です。

1人でイヤホンや小型ヘッドホンを使って練習するなら、FP-40 の1系統で困ることはありません。差が出るのは次の2つの場面です。

これは FP-40 と FP-30X を分ける点と同じで、FP-30X もヘッドホン端子は2系統です。ローランド側から見た違いはローランド FP-40 と FP-30X の違いで整理しています。

Bluetooth、Wi-Fi、USB

2台とも Bluetooth オーディオと Bluetooth MIDI に対応しています。スマートフォンの音をピアノのスピーカーで鳴らすことも、練習アプリと無線でつなぐこともできます。日常の使い方では、ここに大きな差はありません。

違うのはバージョンです。ES120 はオーディオが Bluetooth 5.1(A2DP)、MIDI が5.0です。FP-40 は Bluetooth 5.4で、従来のオーディオ(A2DP)、LE Audio、MIDI に対応します。FP-40 は2.4GHz帯の Wi-Fi も内蔵しており、ローランドの説明では自宅のネットワーク経由でシステムを更新するための機能です。USB は、FP-40 が MIDI とオーディオの両方を扱う USB Type-C、ES120 は USB-MIDI 端子です。LE Audio と Wi-Fi による更新は、FP-40 にだけある機能です。

音源、音色数、スピーカー

ES120 はカワイの Harmonic Imaging 音源で、SK-EX のグランドピアノ音を収めています。同時に出せる音の数は192音です。FP-40 はローランドの Piano Reality Sound Engine で、同時に出せる音の数は256音です。独奏曲の多くはどちらでも足ります。ダンパーペダルを踏んだまま厚い和音を重ねるときは、数字の大きい方が余裕を持てます。

スピーカーの数値は近い値です。ES120 は12cmのスピーカー2基を10W×2で鳴らします。FP-40 は8×12cmのスピーカー2基をスピーカーボックスに収め、12W×2で鳴らします。1チャンネルあたり2Wの差で、居間で弾いて音量がはっきり違うほどではありません。部屋での聞こえ方は、店頭で確かめる項目です。

音色数には大きな差があります。ES120 は25音色で、すべて本体から選べます。FP-40 は合計305音色で、本体パネルから40音色、Roland Piano App からさらに265音色を使えます。アプリを使わなくても、FP-40 の方が音色は多くなります。主にピアノの音で弾くなら、どちらも十分です。

ピアノの音の細かな調整は、どちらもアプリで行います。カワイの Virtual Technician は PianoRemote アプリから17項目を調整できます。ローランドの Piano Designer は Roland Piano App から、屋根の開き具合、弦共鳴、ダンパー共鳴、鍵盤を離したときの音、筐体の共鳴、1音ごとの設定を調整できます。

練習機能:リズムとレッスン用アプリ

ES120 は100種類のドラムリズムを内蔵しています。簡単なメロディーでもリズムに合わせて弾くと音楽らしく聞こえ、自宅で1人で練習する初心者には続けやすさにつながります。FP-40 の公表仕様にリズムパターンの記載はなく、あるのはメトロノームです。

レッスン用の曲は、どちらもアプリへ比重が移っています。ES120 は、カワイの PiaBookPlayer アプリから9冊・377曲の教本曲を使えます。FP-40 の内蔵曲は4曲で、代わりにローランドの Piano Sphere アプリを案内しています。ローランドによると、このアプリでは最初から100曲を使え、有料の追加もあります。どちらも簡単な録音機能を備えています。

サイズ、重さ、付属品

幅は同じです。ES120 は奥行が約5cm浅く、奥行の浅い机に置く場合に有利です。FP-40 は3cm近く低く、棚にしまう場合に有利です。重さは2社で測り方が少し違いますが、公表値では ES120 の方が約2kg軽く、部屋から部屋へ運ぶときに分かる差です。

どちらもスタンドは付属しません。ES120 にはスイッチペダル F-1SP が付属し、3本ペダルの F-351 と GFP-3 がオプションです。FP-40 にはペダルスイッチ DP-2 が付属し、専用スタンド KSF-40 と3本ペダル KPD-70 がオプションです。電池駆動にはどちらも対応していません。

どちらを選ぶか

カワイ ES120 は、ヘッドホンで2人が聴く場面がある方、6.3mmプラグの大きめのヘッドホンを持っている方に向きます。より軽く奥行の浅い本体を選びたい方、内蔵リズムで練習を続けたい方、カワイのタッチを好む方にも合います。

ローランド FP-40 は、エスケープメントと Ivory Feel の鍵盤を選びたい方に向きます。同時に出せる音の数や音色の多さを重視する方、LE Audio や Wi-Fi による更新を使いたい方、薄さを活かして片付けたい方にも合います。1人でヘッドホン練習をする方に向く一台です。

ローランドの PHA-4 Standard とヘッドホン端子2系統の両方がほしい場合は、引き続き掲載されている FP-30X が候補になります。カワイとの比較はカワイ ES120 とローランド FP-30X の比較で整理しています。