同じクラスの、別のピアノ

カワイ CA-701とヤマハ CLP-875は、各社の据置型ラインの最上位に並ぶ2台です。定価の上下は市場によって入れ替わり、日本ではCA-701のほうが安く出ています。いずれにせよ節約のための比較ではなく、この帯の最上位でどちらの一台を手元に置きたいかという比較になります。どちらも木製鍵盤の家具調ピアノで、自宅で弾き込む上級者に向けて、機能の数より弾き心地と音を優先して作られています。そのうえで日本では価格差もあるため、性格の違いと差額のどちらを重く見るかが判断の分かれ目になります。

進め方について一つ。これは仕様にもとづく比較です。2台を並べて弾き比べた経験にもとづくものではありません。ですからタッチの優劣を断定するのではなく、各社が実際に作り込んだ部分を並べ、どんな方に向くかを対応づけます。

鍵盤 — 2つの木製鍵盤フラッグシップ

どちらも木製鍵盤です。ただしヤマハの場合、それがひとつ下のクラスとの境目というわけではありません。CLP-845もすでに白鍵は木製で、短いGrandTouch-S鍵盤を積んでいます。ここで手に入るのは、その上のフルサイズの機構のほうです。そして2台の機構は、互いに性格が異なります。

CA-701はカワイのGrand Feel III、支点の長い木製ハンマーアクションで、全鍵にカウンターウェイトが入ります。CLP-875はヤマハのGrandTouch鍵盤で、白鍵は木製、鍵盤表面は合成の黒檀・象牙調、エスケープメント付きとされています。クラビノーバのライン全体を見比べている方には、押さえておきたい点があります。この鍵盤は、最上位のCLP-885が積むGrandTouchと同じものです。さらに上へ行っても鍵盤は変わらず、変わるのはキャビネットの大きさ、アンプの出力、音色数のほうです。鍵盤で見るかぎり、CLP-875はすでにラインの最上位に並んでいます。

どちらのタッチが正解かは、順位づけできる仕様ではなく好みの問題です。Grand Feel IIIとGrandTouchは、それぞれ別のグランドを基準に作られており、指に返る感触が異なります。これは仕様表では決められない唯一の違いで、可能なら実際に触れて確かめる価値があります。

音源 — グランドは何台、どのグランドか

ここは2社の分かれ方が興味深い部分です。どちらもグランドの音を2つの性格で持たせますが、その出どころが違います。CA-701はSK-EX RenderingとSK-5 Renderingを土台にし、大型のシゲル・カワイ SK-EXコンサートグランドと、小ぶりなカワイのパーラーグランドを収め、96という広い音色を備えます。CLP-875はヤマハのCFXとベーゼンドルファー インペリアルをVRMの弦共鳴とともに鳴らし、音色は絞った38です。

CA-701は、カワイの温かく丸みのあるシゲルの音に加え、探れる音色の総数がはるかに多いのが持ち味です。エレクトリックピアノやオルガン、アンサンブルの音も弾く方には便利です。CLP-875は、明るく前に出るCFXと、暗く深いベーゼンドルファーという、クラシックで映える対照的な組み合わせです。ピアノの音だけで選ぶなら、毎日つき合いたいグランドの性格で決まります。幅広く弾く方には、CA-701の96音色のほうが遊びしろがあります。

部屋で鳴らす — スピーカーとキャビネット

どちらも大型のキャビネットで、カワイが76.5kg、ヤマハが71kgと、設置の楽さに大きな差はありません。どちらも一度据えたら動かさない家具です。ヤマハのほうがわずかに軽い一方、幅はどちらも1450mmで並び、奥行はカワイのほうが3cmほどあります。実際に分かれるのはアンプ部です。CA-701はOnkyoと共同開発した100W・6スピーカー、CLP-875はスピーカーの数こそ同じ6基ですが、出力は合計220Wへと上がります。

実際には、CLP-875のほうが広い部屋を満たす押し出しと余裕があり、人前で弾く場面でも映えます。一方CA-701のスピーカーも十分に豊かで部屋を満たす構成で、カワイの温かい音づくりを生かします。広い空間で日常的に音を出して弾くなら、ヤマハの出力差が実感できる違いです。普通の広さの部屋なら、どちらも余裕があります。

互角の部分

このクラスでは共通点も多くあります。どちらも同時に出せる音の数は256で、ペダルを多用するロマン派の書法にも十分です。Bluetoothオーディオ、Bluetooth MIDI、USB MIDI、アプリ連携も両機が備えます。ヘッドホン端子は2系統で空間最適化つき、夜間の静かな練習にも対応し、スタンドとダンパーペダルも標準付属です。ライン出力はどちらにもあり、外部録音機器につなぐ場合でも差は付きません。内蔵曲はCLP-875が多く(303曲対176曲)、体系的な練習にはわずかに有利です。

どちらを選ぶか

カワイ CA-701が向くのは、カワイのGrand Feel III木製鍵盤と、温かいシゲル・カワイのグランドの音を好む方、そして幅広い演奏のために手元に多くの音色(96)を置きたい方です。カワイの弾き心地と音づくり、そして音の幅を求める方の選択です。

ヤマハ CLP-875が向くのは、ヤマハのGrandTouch木製鍵盤、それも最上位CLP-885と同じ鍵盤を好む方、CFXとベーゼンドルファーの組み合わせを好む方、そして部屋いっぱいに響かせる押し出しのために、100Wに対する220Wという出力差を求める方です。音を出して弾き、ヤマハの明るく大きな音を求める方の選択です。

価格ではどちらとも決めにくいぶん、これは据置型市場でもわかりやすい判断の一つです。好みのタッチと、毎日聴きたいグランドの性格で選んでください。できることなら両方の鍵盤を試し弾きしてほしいところです。このクラスでは、それが長く効いてくる違いになります。