検索の背景にある問い
カワイ CA-401とヤマハ CLP-845を比べている方は、すでに据置型の本格モデルに絞り込んでいます。専用スタンドと3本ペダルを備え、長く一つの部屋に置く前提の家具調ピアノです。どちらも入門機ではありません。問いは「どちらのブランドが上か」という抽象的な話ではなく、自分の練習の仕方にどちらの設計思想が合うか、です。
この2台には価格差があり、それは小さくありません。CLP-845が高いほうです。その差額で何が手に入るのか、そして自分の弾き方にそれが必要かどうか、が比較の中心になります。
進め方について一つ。これは仕様にもとづく比較です。2台を並べて弾き比べた経験にもとづくものではありません。ですからタッチの優劣を断定するのではなく、各社が実際に作り込んだ部分を並べ、どんな方に向くかを対応づけていきます。
鍵盤 — 系統の違う2つのアクション
この2台が最初に分かれるのは弾き心地です。CA-401はカワイのGrand Feel Compact鍵盤で、全鍵にカウンターウェイトを備えた重み付きのハンマーアクション、鍵盤表面は象牙調です。CLP-845はヤマハのGrandTouch-S鍵盤で、こちらも重み付きで、鍵盤表面は同じく象牙調です。どちらも低音は重く高音は軽い段階式で、安価な据置型のプラスチック鍵盤より明確に上のクラスです。
共通しているのは、指が触れる鍵盤表面です。どちらも象牙調の合成素材で、触感そのものに大きな差はありません。一方でヤマハは、CLP-845の鍵盤をGrandTouch-S、白鍵は木製、鍵盤表面は合成の黒檀・象牙調、エスケープメント付きと説明しています。上位機まで見比べている方には、ここが効いてきます。CLP-845からCLP-875への差は木製鍵盤の有無ではなく、支点の長いGrandTouchに変わる点だからです。カワイ側で同じ位置にあたるのは、支点の長いGrand Feel IIIを積むCA-701です。
Grand Feel CompactとGrandTouchは、それぞれ別の基準で設計されているため感触が異なります。ここでの優劣は、どちらのタッチが好みかという問題です。可能なら両方を試し弾きしてください。仕様表だけでは決めきれない唯一の違いが、この鍵盤です。
音源 — コンサートグランド1台か2台か
CA-401はカワイのSK-EX Renderingを土台にしています。シゲル・カワイのSK-EXコンサートグランドをモデルにした音で、音色数は19です。CLP-845はヤマハの2つの旗艦ピアノ、Yamaha CFXとベーゼンドルファー インペリアルを収め、VRMによる弦共鳴を再現し、音色は合計38です。
ピアノを弾く方にとっては、19と38という数より音の性格のほうが重要です。CA-401は、深く作り込まれたカワイのコンサートグランド1台と、それを支える音色を絞って持たせています。CLP-845は、明るく前に出るCFXと、暗く深いベーゼンドルファーという2つの異なるグランドの個性に加え、エレクトリックピアノやオルガン、ストリングスの幅を広めに備えます。曲によって2つのグランドの音を弾き分けたい方には、この選択肢は意味があります。ピアノの音をほぼ一つに決めて弾く方なら、CA-401で失うものはわずかです。
部屋で鳴らす — スピーカーとキャビネット
価格差が耳で分かるのがここです。ただしスピーカーの数は同じで、どちらも4スピーカーです。差が出るのは出力のほうで、CA-401が100W、CLP-845は合計180Wです。ヘッドホンを使わず部屋で鳴らすと、ヤマハのほうが余裕があり、これは広い部屋や、部屋いっぱいに響かせたい場面で効いてきます。
キャビネットの差は、アンプ部ほど大きくありません。CA-401は56kg、CLP-845は60kgで、重さで選び分ける差ではありません。効いてくるのは設置寸法のほうです。CLP-845は幅1450mm・奥行460mm・高さ927mmで、幅1355mm・奥行455mm・高さ860mmのCA-401より10cmほど幅広く、7cmほど背が高くなります。どちらも一度置いたら動かさない家具ですが、コンパクトな部屋に収めやすいのはカワイのほうです。ヘッドホン中心のクラシックの練習では、スピーカーはほとんど出番がありません。つまりこの節がどれだけ重要かが、そのまま各機の向き先を示しています。
互角の部分
仕様表の多くは共通です。どちらも同時に出せる音の数は256で、ペダルを多用するロマン派の密度でも音が途切れません。Bluetoothオーディオ、Bluetooth MIDI、USB MIDI、アプリ連携も両機が備えます。ヘッドホン端子は2系統で空間最適化つき、スタンドとダンパーペダルも標準付属です。ライン出力はCLP-845にはありますが、CA-401にはありません。外部機器へ録音したい方は覚えておくとよいでしょう。内蔵練習曲もCLP-845が多く(303曲対176曲)、レッスン向けにはわずかに有利です。
どちらを選ぶか
カワイ CA-401が向くのは、価格に対してもっともピアノらしさに寄せた一台がほしい方、ヘッドホン中心か比較的小さめの部屋で練習する方、設置寸法の小さいキャビネットを好む方、そしてカワイのコンサートグランドの音1つで十分な方です。この2台では価格を抑えた選択ですが、タッチで妥協した印象はありません。
ヤマハ CLP-845が向くのは、広めの部屋で音を出して弾く方、出力に余裕のある音場に価値を感じる方、性格の異なる2つのグランドと広い音色を使いたい方、ライン出力が要る方、そして価格と幅広のキャビネットを許容できる方です。こちらは上位の据置型で、差額はおもに出力と音色の幅、そして白鍵の木製化に向けられます。指が触れる鍵盤表面は両機とも象牙調で、そこには差が出ません。
決め手はシンプルです。ヘッドホンのために買うのか、部屋のために買うのか。そこがはっきりすれば、CA-401とCLP-845の選択は自然と定まります。