あなたが一番「感じたい」のは何ですか?

静かな夜に30分だけ一人で弾く場面を想像してほしい。その瞬間、何がいちばん大切か。指の下の鍵盤の感触——重さ、押し込んだときの手ごたえ——だろうか。それとも部屋に広がる音——「ピアノといえばこの音」というあの輝きだろうか?

ローランド RP-107 と ヤマハ YDP-145 は同じ価格、どちらも121,000円だ。どちらも据置型コンソールピアノとして完結している。しかし、この2台は「何が大切か」についてまったく違う答えを出している。ローランド は鍵盤の感触に賭けた。ヤマハ は音の個性とインテリアとしての完成度に賭けた。

エスケープメント:実際に指で感じる違いとは

RP-107 は ローランド の PHA-4 Standard アクションを搭載し、エスケープメント機構を持つ。YDP-145 は ヤマハ の GHS(Graded Hammer Standard)で、エスケープメント機構はない。

どちらもグレードハンマーアクション——低音域は重く、高音域は軽い——だ。だが PHA-4 Standard は指で感じられる「あるもの」を生み出す。鍵盤の行程のおよそ3分の2あたりで、ごく短い、ほのかな抵抗感がある。まるで鍵盤が一瞬立ち止まってから底まで落ちるような感覚だ。これはアコースティックピアノの「レットオフ」——ハンマーが機構から離れて弦を単独で叩く瞬間——を再現している。

最初は意識して気づかないことが多い。でもこれは大切なことを鍛える。指がその微妙な抵抗点を見つける感覚を、練習を通じて覚えていく。非常に柔らかく、コントロールされた音を出すための身体感覚——各音を際立たせたり、ピアニッシモでフレーズを形作ったりするための感覚だ。エスケープメントのあるアクションで練習した人は、知らないうちにこの感覚を身につける。GHS で練習した人はそうではない。YDP-145 で練習して将来アコースティックピアノに触れたとき、レットオフの感覚が「初めてのもの」に感じられる。RP-107 で練習した人には、なじみのある感覚になる。

GHS を批判しているわけではない。初心者向けの基本的な練習には十分な技術を教えてくれる。ただ、同じ価格でRP-107がより洗練されたものを提供している事実は、成長したいと考えている人には知っておいてほしいことだ。

YDP-145 が持つ本物の強み

ヤマハ の CFX サンプリング——Arius シリーズ全体で使われているコンサートグランドの音源——は、明るく透き通ったキャラクターを持つ。多くの人が「ピアノのレッスンや発表会で聴いてきたあの音」とすぐに感じる音だ。その音と一緒に育った人にとって、YDP-145 はスペックの比較では伝えられない「帰ってきた感覚」を与えてくれる。

鍵盤スライドカバーは、ピアノがリビングに置かれる家庭には実用的な利点だ。ヤマハ を閉じれば、それは「家具」として空間に溶け込む——きれいに収まり、部屋に属している。RP-107 は鍵盤が常に見える状態だ。練習していないときのピアノの見た目を気にする人には、これは大切なポイントだ。

YDP-145 はシンプルな楽器でもある。音色10種類、Bluetooth なし、ピアノとして弾くことに集中した設計だ。機能やメニューをあれこれいじりたくない人にとって、この「絞り込み」は本物の美徳だ。

Bluetooth とケーブルの問題

RP-107 は Bluetooth Audio と Bluetooth MIDI を搭載している。YDP-145 はどちらもなく、アプリ連携には USB ケーブルが必要だ。

RP-107 の Bluetooth MIDI は、タブレットで ローランド のアプリを開けばケーブルなしでつながる。YDP-145 でアプリを使うには、毎回 USB ケーブルを挿しなおす必要がある。一度ならたいしたことではない。でも毎日の練習の中でこれを繰り返していると、静かにアプリを使わなくなる理由のひとつになっていく。ローランド はその摩擦をなくした。

Bluetooth Audio はさらに別の便利さを加える。スピーカーから音楽を流しながら練習できる、スマートフォンの音楽に合わせて弾ける、動画レッスンの音声をピアノのスピーカーから出せる。YDP-145 にはこれらの機能は一切ない。

RP-107 の324音色のうち、アプリなしでパネルのボタンから直接使えるのは15種類だけだ。YDP-145 の10音色はすべてパネルから使える。1〜2音色しか使わない初心者にとって、どちらの数字も実際の制約にはならない——日常的に弾くのはピアノの音だから。

自分の優先順位に合ったピアノを

ピアノとして成長したいなら ローランド RP-107。 PHA-4 Standard のエスケープメント機構は、同価格帯でより高度な鍵盤体験を提供し、将来アコースティックピアノに触れたときのための「手」を育ててくれる。Bluetooth 接続はアプリが途絶えない環境を作り、6.3mm と 3.5mm の両ヘッドホン端子は、家族みんなのヘッドホンをアダプターなしでつなげられる地味に助かる設計だ。

音の個性と使いやすさを重視するなら ヤマハ YDP-145。 CFX の明るい響きは、幼いころから聴いてきた「ピアノの音」の記憶と重なる人には代えがたい選択だ。スライドカバーでリビングに自然に溶け込むインテリア性は、YDP-145 の方が明らかに上だ。機能を極力シンプルにしたいと思うなら、YDP-145 の「絞り込み」はむしろ強みになる。