同じ鍵盤を使う、ローランドの2台のポータブル型
ローランド FP-30X と ローランド FP-E50 は、同じ楽器の普及版と上位版のように見えます。ある意味ではその通りで、鍵盤、ピアノの音源、スピーカーは仕様の上で共通です。ただし、性格ははっきり違います。FP-30X はピアノとして弾くことにほぼ専念した機種です。FP-E50 は、そのピアノにマイク入力、ボーカル用エフェクト、伴奏リズム、画面を組み合わせた機種です。
そのため、比べるべきは「どちらが弾きやすいか」ではありません。FP-E50 で増える機能を、自分が使うかどうかです。
方法について先に書いておきます。これはローランドの公表仕様にもとづく比較で、2台を弾き比べた経験はありません。
共通している部分
共通点は、思った以上に多くあります。
- 鍵盤。 どちらもローランドの PHA-4 Standard で、エスケープメントと Ivory Feel(象牙調の鍵盤表面)を備えた88鍵です。同時に出せる音の数もどちらも256音です。
- ピアノの音源。 ピアノの音色はどちらも SuperNATURAL Piano です。
- スピーカー。 どちらも12cmのスピーカー2基を11W×2で鳴らします。FP-E50 はスピーカーボックスに収めていますが、定格出力は同じです。
- ヘッドホン。 どちらもヘッドホン端子が2系統で、ステレオミニ端子と標準端子(6.3mm)が1つずつあります。2人で同時に聴くことも、大きめのヘッドホンを変換プラグなしで挿すこともできます。
- ペダルとスタンド。 どちらもペダルスイッチ DP-2 が付属し、スタンドは別売りです。3本ペダル KPD-70 はどちらもオプションで使えます。電池駆動にはどちらも対応していません。
もし FP-E50 を「タッチが良くなるから」という理由で検討しているなら、仕様からはその根拠は見当たりません。鍵盤は同じ型式です。
FP-E50 で増えるもの
マイク入力。 FP-E50 には標準ジャックのマイク入力があり、FP-30X にはありません。マイクの声は本体のスピーカーから出せます。エフェクトとして、ローランドは Auto Harmony(9種類)、Vocal Designer、Voice Transformer、コンプレッサー、ノイズ・サプレッサーを挙げています。弾き語りをする方、自宅や小さな会場、教会などで歌と一緒に弾く方にとっては、2台を分ける最大の点です。
伴奏機能。 FP-E50 には、イントロ・エンディング・バリエーション付きのリズム(ローランドの表記ではシステム・アップデート1.10適用後に177種類)、Chord Sequencer、設定を呼び出す Scene があります。FP-30X はメトロノームを備えますが、伴奏パターンはありません。
2つめの音源。 FP-E50 は SuperNATURAL Piano に加えて、ローランドのシンセサイザー用音源 ZEN-Core を搭載しています。ピアノ以外の音色の多くはこちらから出ます。
画面と音声入力。 FP-E50 にはグラフィック液晶と、ステレオミニの音声入力端子があります。FP-30X の仕様にはどちらも記載がありません。なお、スマートフォンの音楽を Bluetooth オーディオで鳴らすことはどちらでもできます。
内蔵曲は少なめ。 逆に FP-E50 の方が少ないものもあります。ローランドが公表する内蔵曲は FP-30X が30曲、FP-E50 が3曲です。本体だけで聴いたり一緒に弾いたりする曲を重視するなら、FP-30X の方が多く入っています。
321音色と1,018音色:内訳で読む
比較表では、FP-30X が321音色(本体パネルから56音色、残りは Roland Piano App から)、FP-E50 が1,018音色と表示されます。差は確かにありますが、ピアノの音色の差ではありません。
ローランドが公表している FP-E50 の内訳は、ピアノ38、エレクトリックピアノ34、ストリングス36、オルガン・パッド184、シンセ・その他726(ドラムキット74を含む)です。増えた音色の多くは、伴奏やバンド風の演奏を厚くするためのものです。FP-30X については内訳が公表されていないため、ピアノの音色同士を数で比べることは仕様からはできません。
数字から言える実用上の違いは1点です。FP-E50 はすべての音色を本体と画面で選べますが、FP-30X は音色の大半を選ぶのにアプリが要ります。スマートフォンを使わずに音色を切り替えたい方には、FP-E50 の方が扱いやすいでしょう。
Bluetooth
どちらも Bluetooth オーディオと Bluetooth MIDI に対応しています。FP-30X はオーディオが3.0、MIDI が4.0で、FP-E50 はどちらも4.2です。スマートフォンの音をスピーカーで鳴らす、練習アプリと無線でつなぐ、という使い方では、2台にできることの差はありません。
サイズと重さ
ローランドはどちらも譜面立てを外した状態で寸法を公表しています。
- FP-30X: 幅1,300mm・奥行284mm・高さ151mm
- FP-E50: 幅1,300mm・奥行322mm・高さ174mm
幅は同じです。FP-E50 は奥行が4cm近く深く、高さも2cmあまり高く、重さも、譜面立てを含めて FP-30X の14.8kgに対し17.1kgと重くなります。スタンドに載せるより、奥行の浅い机や棚に置く場合に差が出ます。専用スタンドはそれぞれ別で、FP-30X は KSC-70、FP-E50 は KSFE50 です。
価格
日本国内の価格では、FP-E50 の方がはっきり高くなります。その差額に見合うかどうかは、ほぼマイク入力と伴奏機能を使うかどうかで決まります。鍵盤とピアノの音は、FP-E50 を選んでも変わらないためです。
どちらを選ぶか
ローランド FP-30X は、主にピアノの練習をしたい方に向きます。少しでも小さく軽い方が良い方、FP-E50 で増える機能を使わずに終わりそうな方にも合います。
ローランド FP-E50 は、弾き語りをする方に向きます。リズムやコードの伴奏を練習や小さな演奏の場で使いたい方、アプリを使わずに画面で音色を選びたい方にも合います。
ピアノ専念型が良いものの FP-30X に決めきれていない方は、ローランド FP-30X と FP-40 の比較も参考になります。他社の伴奏機能付きポータブル型と比べたい方は、ローランド FP-30X とヤマハ DGX-670 の比較が参考になります。