どちらもカワイ製の鍵盤

上位のステージピアノを探すと、この2台はよく一緒に候補に挙がります。カワイ MP11SE は、木製鍵盤を積んだカワイのフラッグシップ・ステージピアノです。Nord Grand 2 は Nord のピアノ特化型モデルで、鍵盤はカワイ製です。どちらを選んでも、指の下にあるのはカワイの鍵盤です。ただし鍵盤の種類は違い、楽器全体の考え方も大きく異なります。

方法について先に書いておきます。これは公開スペックにもとづく比較で、2台を弾き比べた経験はありません。数値は、メーカーの公表仕様をもとにした当サイトの製品データによります。両機で意味の違う数字には、その都度ふれます。

鍵盤:木製の Grand Feel と Responsive Hammer III

MP11SE の鍵盤はカワイの Grand Feel です。当サイトのデータでは、長い木製鍵盤がグランドピアノのように支点から動きます。鍵盤ごとにカウンターウェイトが入り、レットオフの感触もはっきりしています。データベース上は Grand Feel Standard で、当サイトの10段階評価では8です。

Grand 2 はカワイ製の Responsive Hammer 鍵盤です。データベース上は Responsive Hammer III に分類しています。カワイ自身の ES920 や CN-301 と同じ項目で、評価は7です。Nord はこれにトリプルセンサーとエスケープメントを組み合わせています。当サイトのデータには、この鍵盤が木製だという記載はありません。

共通点もあります。どちらも象牙調の鍵盤表面で、どちらもレットオフ(エスケープメント)の感触があります。ゆっくり押したとき、底の手前で感じる小さな引っかかりです。グランドピアノらしさの基本は、どちらにも備わっています。

違いは鍵盤そのものです。MP11SE はカウンターウェイト入りの長い木製鍵盤、Grand 2 はカワイの Responsive Hammer 系の鍵盤です。評価の1点差は、この構造の差によるものです。ただ、評価は仕組みの比較で、どちらが手に合うかまでは決めません。

カワイの店頭で ES920 や CN-301 を弾くと、この系統の鍵盤の感触をつかむ手がかりになります。ただし Nord での仕上がりは、Grand 2 本体を弾かないと分かりません。

音:内蔵の音色と、Nord のライブラリ

MP11SE は内蔵40音色で、音源はカワイの Harmonic Imaging XL です。当サイトのデータでは、SK-EX や EX といったカワイのコンサートグランドの音を含みます。出荷時に入っている音色で弾く、という作りです。

比較表では、Grand 2 の音色数は「—」と表示されます。Nord が内蔵音色の数を公表していないためです。当サイトのデータでは、Grand 2 のピアノ音は Nord ピアノライブラリから本体に読み込み、調整して使うものです。一方、MP11SE の40音色は本体に内蔵された決まった音です。同じ物差しで比べられる数字はありません。カワイは出荷時の音をそのまま使う作り、Nord はライブラリを自分で入れ替えて使う作りです。

Grand 2 は、あえてピアノに絞ったモデルです。Nord の Stage 4 にはオルガンやシンセの機能がありますが、Grand 2 にはありません。レイヤーとスプリットは使えるので、ピアノとストリングスを重ねる演奏には対応します。MP11SE もレイヤーとスプリットに対応しています。

カワイのコンサートグランドと Nord のライブラリ、どちらの音が好みかは表では決まりません。ヘッドホンで実際に聴いて判断する部分です。

同時に出せる音の数:256音と120音

MP11SE は256音、Grand 2 は120音です。ピアノ1音色で弾く分には、差が出る場面はあまりありません。差が出るのは、ピアノとストリングスを重ね、ペダルを長く踏み続ける場合です。音色を重ねるほど、使う音の数も増えるためです。

こうした弾き方では、Grand 2 の120音が足りなくなることがあります。ピアノ単体が中心なら気になりにくく、重ねる演奏が多いならカワイが有利です。

ステージで:重さ、大きさ、付属品

2台の差が最もはっきり出るのはここです。

Grand 2 は12.7kg軽く、どの寸法も小さくなっています。MP11SE の34kgは、運ぶたびに丈夫なケースと人手が必要になる重さです。Grand 2 なら、定期的にライブへ持ち出すことも現実的です。

どちらもスピーカーはなく、アンプや PA、ヘッドホンが必要です。そのためのライン出力はどちらにもあります。ヘッドホン端子は、2台とも6.3mmが1つです。スタンドはどちらも付属しません。

ペダルはどちらも3本ペダルが付属します。MP11SE はカワイの GFP-3(ハーフペダル対応のダンパー、ソフト、ソステヌート)、Grand 2 は Nord Triple Pedal 2 です。ペダルを買い足す必要はありません。

接続と練習の機能

接続はどちらも USB MIDI です。Bluetooth のオーディオにも MIDI にも対応せず、アプリ連携もありません。どちらも、すべて有線でつなぎます。当サイトのデータでは、MP11SE の MIDI 機能は豊富で、複雑なステージの組み方にも対応します。

MP11SE には録音機能とメトロノームがあります。Grand 2 のデータには、どちらの記載もありません。録音やメトロノームは、スマートフォンやパソコンなどで補うことになります。移調はどちらも使えます。

発売時期も違います。MP11SE は2017年、Grand 2 は2024年の発売で、どちらも現行機です。価格は Grand 2 の方が高く、国内の価格では差がさらに大きく開きます。

どちらを選ぶか

カワイ MP11SE は、まず鍵盤を重視し、ステージでも長い木製鍵盤で弾きたい方に向きます。音色を重ねる演奏が多く、256音の余裕がほしい方にも合います。録音やメトロノームを本体で使いたい方、置き場所がほぼ決まっている方、運ぶ人手がある方も候補に入れやすいでしょう。

Nord Grand 2 は、自分で楽器を運び、定期的にライブをする方に向きます。Nord のライブラリからピアノの音を選び、入れ替えて使いたい方にも合います。オルガンやシンセは不要で、ピアノに集中した楽器がほしい方にも向いた一台です。

どちらもカワイの鍵盤ですが、種類は別物です。決める前に両方を弾いてみるのが、いちばん確かな方法です。同じクラスのほかの候補は、ライブ向け推奨ステージピアノのガイドにまとめています。